今回は前回からの続きで法人設立で可能となる節税方法について、解説していきます。
今回ご紹介する節税方法は、以下の通りです。
・交際費、福利厚生費
税法では、原則として「法人が支出する交際費は損金算入できない」と定めています。しかし中小企業(資本金が1億円以下の法人)には「交際費課税の特例措置」があり、以下の2種類からどちらかを選択し、交際費を損金算入することができます。
※国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
①交際費の50%
②800万円までの交際費全額
通常、交際費を800万円も使うことはないと思われますので②を選択するのがいいと思います。つい10年程前までは、交際費は全額経費として落とすことが認められていなかったため、1人5,000円以下という枠付きで飲食して議事録を作成し会議費に分類するといったことが広く行われていました。(大企業では未だに行われていますが。) しかし、800万円までを全額損金算入できるようになってからは、そんな涙ぐましい努力をする必要もなくなり、会議費と交際費を区別する必要性も薄れてきました。
800万円までは何でもOKとはなっていますが、売上げに対して交際費の割合が異常に高い法人は、税務署から調査が入る確率が上がると言われています。業種にもよりますが、飲食店やバーを経営しているなら事業活動の一環ですので問題ないと思われますが、住宅賃貸がメインの不動産事業で交際費が多いとNGだと思われます。私としては、売上げの1割程度であれば、そこまで厳しく追及されないのではないかと思っていますが真相は分かりません。。。
本題に入りますと、交際費は領収書があれば基本的に経費として算入することが出来ますので、レストラン・居酒屋などで新年会、忘年会、お花見、打ち上げ等をする場合に使えると思います。私は物件が増えるタイミング(金消契約締結)で妻と「事業拡大の打ち上げ」と題して、レストランで食事をすることにしています。建前としては社員の慰労会ですね。また、仲のいい不動産仲間がいると経費で酒が飲める訳で、常識的な範囲の額であれば回数が多くても問題ないと思います。
また月1~2回とか社内打合せを定期開催することを決めておいて、家で高級弁当を取ったりしてもいいかもしれません。あとは少し使いにくいですが、お中元、お歳暮ですね。懇意にしている不動産業者であったり、顧問税理士、不動産仲間などの関係者に送っても喜んで貰えると思います。(自分に送るのは交際費にならず、所得扱いになるので全く節税にはなりません。)
福利厚生費としては、社員旅行・人間ドッグなどが上げられます。
まず社員旅行からいってみたいと思います。
参考:国税庁「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」
社員旅行は家族経営会社であったとしても全員参加するのであれば認められると思いますが、以下の条件があります。
①旅行期間は4泊5日以内であること(海外旅行の場合、機中泊を除いて現地で4泊5日以内)
②社員全員が対象であり、社員の50%以上が参加していること
③会社負担が1人15万円程度以内であること
この3条件のうちどれかが欠けていると、過去の判例から税務署から否認される可能性が高いです。
そのため、個人的には福利厚生の社員旅行としてではなく、リゾート地の不動産物件調査名目で行くと旅行先の範囲が広がるのでオススメです。(議事録や現地不動産会社との調整が手間ではありますが。)
次に人間ドック、健康診断ですが、こちらも以下の条件があります。
参考:国税庁「人間ドックの費用負担」
①全社員が対象であること。
②会社が受診機関に対して直接費用負担をしていること。
③健康管理上必要とされる、常識の範囲内の費用であること。(がん検診等は高額のためNG)
大企業に勤めているサラリーマンであれば、あんまり有難みがないかもしれませんが、配偶者がそうでなければ、家族経営法人で人間ドックを受けられるのはメリットだと思います。こちらは社員旅行と違い、全員が受診する必要はありません。あくまで全社員に権利があるという状態が重要なだけですので、自分だけ勤務先で受診し、妻だけ家族経営法人の費用で受診することは何も問題はありません。
労働安全衛生法で義務付けられている健康診断はあくまで「従業員」を対象としていますので、役員は社員であるものの受診していなくても、法的には問題ありません。(自分の健康には投資した方がいいと思いますので、自営業の方は特に受診をおススメしますが。)
上記にも書いていますが、福利厚生費の注意点としては役員に限らず社員全員が使えるということが大切です。現状は家族経営となっていて、たまたま従業員がいないだけで、もし従業員を雇用したら当然従業員も使うことが出来るという設定にしておくことで税務署からの指摘に対応することができます。
・小規模企業共済、セーフティ共済への加入
まず小規模企業共済は「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」が運営しており、簡単に言うと中小企業の退職金制度になります。加入資格は、個人事業主or中小企業の経営者となっていますが、個人事業主でサラリーマン不動産投資をやっている場合、この小規模企業共済には加入できません。しかし、法人成すると加入することができます。加入名義は個人名で、支払いも個人の銀行口座からとなりますので、法人の経費としては使えません。掛金は月1,000~7万円まで500円単位で好きに決めることができ、途中の変更も可能です。
この小規模企業共済のメリットは以下の3点です。
①掛金全額を所得控除できる。
②設立会社を退職したときに一括で受取ができ、退職金控除が適用できる。
③退職しなくても20年以上継続すれば、元金割れしない。
詳しくはこちらを参照いただければ分かりますが、所得税が高すぎて困っている方には十分オススメできる節税方法です。
2点注意が必要なのですが、1点目は退職金控除は5年に1回しか適用できず、5年以内複数回退職金(確定拠出年金等含む)を受け取る場合、勤続年数のカウントがその前に退職金を貰ってからの年数となります。(それでも所得額が半分に圧縮される上、基礎控除を差し引いてくれるため十分にメリットはありますが。)
2点目は上記の通り、数十年単位で掛けることが前提の制度であり、すぐにキャッシュが必要な場合や掛金を多く掛けすぎた場合などは、手元のキャッシュフローが悪くなりますので、余剰資金を掛けるのがいいと思います。銀行で眠っているくらいなら小規模企業共済で眠っている方が税金的にお得という感じです。所得税を取られてたとしても、年利3%で配当が貰える株に投資した方が20年~という長期スパンで見るとお得になる(株価が下がらず良い業績が継続すればですが)ケースもありますので、投資に自信がある方は所得税を取られても手元に入れて投資するという選択肢もありです。
次はセーフティ共済です。こちらも「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」が運営しており、中小企業の連鎖倒産を防止するための積立金制度のような制度です。こちらは法人の口座から支払いますので、法人税の節税対策になります。取引先が倒産した場合に積立金を返還して貰えます。こちらも個人事業主で不動産投資を行っている場合、加入はできるものの経費算入できないため、法人成して加入しないと意味がありません。
セーフティ共済のメリットは、たった1つだけです。
①税金を繰り延べできる
上記の小規模企業共済は返還時は退職金控除が適用されましたが、こちらは雑収入扱いとなりますので、単純に黒字のときに積立て、黒字のときに返還して貰っても全く節税になりません。黒字のときに積み立てておき、赤字になったときに解約して返還してもらうことで節税となります。そのため、万年黒字経営の会社は使い道がありませんw
また小規模企業共済と同じく、キャッシュを寝かせることになりますので、経営を圧迫する可能性もありますので、使い勝手はあんまりよくないかもしれません。とはいえ、少額であれば掛けておいてもいいのではないかとは思います。
・法人カード、法人会員他
こちらは節税ではないのですが、法人成したから利用できるものを紹介したいと思います。
①法人クレジットカード
まずはクレジットカードですね。各社からいろいろ法人カードが出ていますが、私としてはEX Gold for Biz Mがオススメです。いろいろあると思いますし何でもいいとは思いますが、こちらのカードはダイニング by 招待日和という高級レストランを2名以上で利用するときに1名無料になる優待特典が付属しており、2名で食事に行くとコースが半額になります。マスターのビジネスゴールドだから付属している特典で、年会費2,200円なら十分価値があると思います。もちろんゴールドカードですので、国内空港のラウンジも利用出来ます。
②コストコ法人会員
こちらも趣味にはなってしまいますが、コストコで法人会員価格で会員になることができます。個人会員が4,400円(税別)に対して、法人会員は3,850円(税別)ですので600円ほどお得になります。たいしたことはありませんけど、少し嬉しいですよね。個人事業主でも法人会員になることはできますが、屋号が記載された名刺が必要なため、不動産投資家には少しハードルが高かったりします。(個人事業主登録の書類ではNGだと断られました。どうやら個人名とは異なる屋号が記載された文書が必要とのことだったので、個人事業主での法人会員登録は断念しました。)
他にもスポーツクラブや通販などの福利厚生費で法人契約を締結すれば、活かせそうところはありますが明確ではないので、判明次第追加したいと思います。
以上が法人での節税&メリットとなります。法人を作ったことによるデメリットも次回書きたいと思います。ではまた~。
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